任意後見制度をご存じでしょうか?

後見制度には法定後見制度と任意後見制度があります。

法定後見制度はすでに判断能力が不十分な方が、ご本人の判断能力に応じて、後見・保佐・補助の制度を利用することができます。利用するためには家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が成年後見人・保佐人・補助人を援助者として選びます。家庭裁判所が選任するので身内が後見人などに選ばれるとは限りません。

一方、任意後見制度は今は大丈夫だけれど、将来の不安に備えておきたい方の制度です。

将来、判断能力が不十分になった場合に備えて「誰に」「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ契約により決めておく制度です。公証役場で任意後見制度契約を結びます。

例えば、Aさん(70代女性)は6年前に夫を亡くし子供はいません。先日、入院生活を経験し心細くなってきました。自分の兄弟も高齢になってきているし、甥や姪もそれぞれの生活があるので迷惑はかけたくない。これから、「もし自分が認知症になったら生活はどうなるのか」「また入院することになった時、お金の管理などを任せれる、信頼できる人がいれば・・・」そんな風に思っていた時に任意後見制度を知りました。自分が信頼する人を将来の後見人に選び、公証役場で契約書を作り、内容は法務局に登記されます。契約は家族や友人の他、弁護士や司法書士などの専門職がなれます。未成年や破産した人は後見人にはなれません。Aさんは専門職である司法書士と任意後見契約を結び、別途費用はかかりますが月一回訪問して安否を確認してもらう見守り契約も結びました。月一回の見守り契約を結ぶことで、自分の健康状態や判断能力が衰えてきていないかなどを確認してもらえるのと、自分の考えや好みについても知ってもらうことができるので、将来もし認知になってしまったときなどの備えとして有効であると思ったからです。現在は遺言書の作成についても司法書士と相談しています。子供のいないAさんにとって、自分の亡きあとに財産のことで身内が揉めることの無いように準備しておいた方が良いと考えたからです。

任意後見制度が発足して今年で14年になりますが、まだまだ利用が低調なのは、制度がまだまだ知られていないことが一番の原因でしょう。

これから高齢者の人口がどんどん増えていくなかで、任意後見制度について知ってもらうことが専門職である司法書士の役目でもあると考えています。

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